コラム No.27-30サプライチェーン
秋葉淳一のスペシャルトーク 第2回 コストセンターから付加価値を生み出すセンターへフレームワークス 代表取締役社長 秋葉淳一 × 株式會社ママスクエア代表取締役 藤代 聡
公開日:2018/10/23
省人化と雇用を両立させる

藤代:私がリクルートに在職していたときは、まさにバブルの時期でした。そのときも「人が採れない」?fàn)顩rでしたが、現(xiàn)在の狀況とはまったく違います。
たとえば、私たちは現(xiàn)在ショッピングモールに出店していますが、多くのショッピングモールは厳しい狀況です。ある運営會社からたくさんの出店候補地をもらいましたが、半分が書店さんでした。Eコマースの影響などで、書店は大変厳しい狀況なわけです。今ではファッションの小売店においても、多くの店舗が厳しい狀況です。ですから、私たちへのオファーが増えているのです。
実は、ママスクエアは単なる出店店舗ではありません。なぜかというと、1店舗30ブースだとすると80~100人のお母さんが所屬します。働いたお母さんは、働いた後に買い物していくわけです。ショッピングではなく仕事なので、雨の日も雪の日も必ず出勤します。ですから、去年の大雪の日に賑わっているブースは弊社だけでした。ショッピングモール側(cè)からしてみると、集客できる施設(shè)と期待しているわけです。
秋葉:流山のセンターは、ロボティクスを活用して省人化を図るとともに、働くお母さんも支援しようとする先進的な物流施設(shè)です。これに対して、この二つは両立するのかという質(zhì)問をよく受けますが、私たちからすれば、まったく人がいない物流施設(shè)というのは、作ることはできるのですが、取り扱うことのできる荷物側(cè)に制約が出てきたり、お客様の事業(yè)構(gòu)造にも影響を與えたりします。人がいて、フレキシビリティがあるからお客様の事業(yè)にも合わせられるし、ある程度の種類の荷物を扱えます。
人がいない物流施設(shè)も、それはそれでありだろうとは思いますが、ロボットいっぱいのセンターを作ることが目的ではありません。大和ハウスグループ全體のお客様にとって、それは戸建てに住んでいるお客様もそうですし、流通店舗のお客様もそうですし、メーカー様もそうです。
そういうお客様に対して、物流サービスの提供がスムースにできるようにすることが、私たちがやらなければいけないことなのです。そのため、「人にどういう風(fēng)に働いてもらうか」ということは大きなテーマです。そのうえで「ロボットや人工知能をうまく活用する」ことが重要です。人と先進技術(shù)がうまく融合する施設(shè)をどれだけ作ることができるかということです。
藤代:大和ハウスグループさんは、ショッピングモールからあらゆる施設(shè)をひと通り持っていらっしゃいます。様々な機能を集めてやっていかないと、大きな労働力を集められないのではないかという提案もさせていただきました。
これからも、新しいバリューや新しいライフスタイル提案をさせていただきたいと思います。たとえば働き方とタウンというかたちをセットにして現(xiàn)出させるといったことです。
自分でやっていて思うのですが、親子カフェもママスクエアも世の中で初めてだったので、話すだけでは、皆さん「いいね」というだけで、興味があるとか、一緒にやろうという話にはなかなかなりませんでした。でも、実際に一つやってからはものすごい引き合いがきました。
企畫や計畫の段階ではなかなか現(xiàn)実化しないことが多いのですが、「これです」と見せることができれば、「いいね。それをうちにも」という話になることが増えます。ですから、一つきちんと作って、できるということを世の中に知ってもらえると、それがパッケージとなって橫展開していくようなことが起こってくるのだと思います。

秋葉:小売業(yè)さんにしてもメーカーさんにしても、物流に対する意識、考え方を変えていくということが、一番重要なことでしょう。ですから、市川でR&Dセンターを始めたことや、その知見を流山で具體化していくことに価値があるのです。藤代社長が言われた通りです。日本人の気質(zhì)からすると、やはり実績を見ていただくことが重要です。実績というか、事例というか、事実を積み上げることが重要です。市川、流山と展開してきましたが、流山に藤代社長に入っていただいたことは、組み合わせの事例としても大変大きなことです。ここは今後どんどん加速させたいですね。
物流業(yè)界の仲間、荷主様もセンターを見に來られるのですが、案內(nèi)するときには1階の保育所のところから始めます。というのは、私らがやっているところだけに藤代社長に入ってもらっても、業(yè)界全體からするとまだまだ少數(shù)です。物流業(yè)界の全體を変えていくためには、もっと他のところにも出店していただいて、新しい働き方を全體として作っていきたいのです。
物流タウンとして街づくりまでを行いたい
秋葉:私たちが扱う商品、荷物ということで考えると、「衣食住プラス醫(yī)療」だと思っています。住のところは、元々の大和ハウスグループの事業(yè)の中で、以前から大和物流という會社があって、建材等の物流をやっています。殘っているのはアパレル系の衣、食品、醫(yī)療関係です。醫(yī)療関係は特殊ですが、アパレル系と食品は普段の生活の中で必要なものです。だからこそ、働きたいと思っているパートさんやお母さんたちに仕事をしていただくほうがありがたいと思っています。そういう中で、たとえばファミリーセールのようなイベントや、食品でも何かサービスができるようになるとタウンとしての機能が生まれてくると思います。そういうことの組み合わせが、流山の施設(shè)の中でできてくると、そこの大きな街のイメージができますよね。
少し話が飛びますが、イタリアに「イータリー」という、物販と飲食が融合した施設(shè)があります。そして「FICOイータリーワールド(FICO)」という施設(shè)が2017年11月にイタリアのボローニャに開業(yè)しました。ものすごく大きな敷地の中に、イートインのお店をはじめいろいろなお店が入っています。日本のショッピングモールとはまったくイメージが違っていて、その中をかご付き自転車のシェアサイクルで買い物をして回ったりしています。私の中では、そのイメージが近いですね。流山にいろいろな物流施設(shè)を建てて、そういう街としての機能の中で働きながら、もしかすると、そこで扱っているものの売り場がセンターの中にあったり、自由に買えたりするようなことができてくると、そこで働いていることがブランドや新しい価値になっていくと思っています。

藤代:流山には多くの物流施設(shè)ができると聞いています。そうすると、流山の流入人口が多いといっても、それだけでは賄いきれないのではないでしょうか。三郷や関宿、野田から集めても足りないと思われます。そこに一つのタウンを作るくらいの構(gòu)想が必要ではないかと思います。
今回は保育所を作らせていただきましたが、當(dāng)社ではシングルマザー支援もしています。シングルマザーは日本に約110萬人いると言われていて、住むところと仕事をセットで探している方が多いです。たとえば、そういうママたちに移住してきてもらって、働いてもらえれば、大きな労働力になります。かなりの流入を図らないと、あれだけの規(guī)模を賄い切れないのではないかと考えています。
秋葉:物流からの視點で見ても、たくさんのセンターが集約されていることはとても効果的です。たとえば、アパレル系の會社が出荷する先は、共通する場合があります。ショッピングモールにしてもロードサイド店にしても、だいたい集中しているからです。ですから、本當(dāng)は、出荷先が一緒だったらみんな一緒に出したいはずです。ところが商売上はコンペティターなので、コンペティター同士が一緒にやろうとはなかなかなりません。ところが、流山にみんなが集まってくれば、私たちがそれをコントロールして一緒に出荷したり、オペレーションをシェアするようなこともしやすくなります。入ってくる荷主さんにとっても大変効果があるし、働く人にも効果がある。「私、昨日までアパレル系の會社で働いていたけど、來月から食品系でやるわ」という感じでもいいのです。通勤は何も変わらないのですから。そんな感じの街づくりができたらいいですね。
藤代:私たちの立場から物流を見ても、従來とはまったく変わってきていると感じます。
AmazonもZOZOTOWNもリアルな店舗を持ちません。Amazonにしてみれば、店舗がない分、物流施設(shè)が戦略の拠點となっているのではないでしょうか。拠點という考え方が変わってきているので、店舗に投資している分を物流に回すことができる。Amazonの物流は驚くべき速さです。夜に発注しておくと翌朝には屆くこともあります。書店に買いに行くよりもネットで頼んだほうが速い、ということが現(xiàn)実になってきています。
ですから、そこの流通と物流のところが進化していくに決まっているわけです。そこを擔(dān)う人たちが必要になりますので、そこがどんどん良くなる、あるいは効率化していくものと思っています。
秋葉:藤代社長のおっしゃるとおりです。物流施設(shè)は、普通に仕事をしていただける場所なのだと思います。それが今までコストと言われていて、なるべくお金をかけないようにするのが美徳だという風(fēng)潮もありました。そうすると、あくまでイメージですが、暗い中で作業(yè)をしているのではないかとか(笑)。しかし、実際には違います。扱っている商品を汚してはいけないので、いかに綺麗にするかということを一生懸命やっています。
先日、福井のある會社の物流施設(shè)に行ってきました。そこはアパレル系、雑貨系、健康食品などを扱っているお客様のセンターで、エントランスにいきなり1960年代のキャデラックが置いてあるんです。とても物流施設(shè)とは思えません。中を案內(nèi)してもらいましたが、すごく綺麗に整理整頓されていました。すでにイメージと実態(tài)が離れてきています。今まで、お店だったら、お客さんが來るから綺麗にしましょうということは當(dāng)然されていたと思います。物流施設(shè)なのでなかなか一般の方が見ることはないのですが、イメージはすごく変わってきています。私たちも、物流施設(shè)で仕事をすることを楽しみにしていただけるようにしたいですよね。
物流センターの中で行う仕事も大きく変わる

秋葉:センター全體で考えると、本當(dāng)に人間をゼロにできるかというとできません。ということは、新しい職場としての物流施設(shè)でどういう人たちに働いてもらうか、そしてそこで働く人をどうやって募集するかということになります。
そうした狀況を考えたとき、流山という場所は非常に最適です。先ほどもいったように、子育て世代の人たちが多いことは非常に良いことです。ロボットや人工知能、IT系の話にそれほど否定的な世代ではありません。世代的に慣れ親しんでいるというか、普通にICTやテクノロジーについてよく知っている人たちです。そういう人たちにパート等で來ていただけるということは、物流センター內(nèi)のオペレーションシステムに対して、すごくスムースにいく可能性が高くなります。ロボットと人工知能と人間がうまく共存できるようなセンターを作りやすい環(huán)境になると思います。そういう環(huán)境で、気持ちよく働いていただきたいのです。気持ちよくというのは、いろいろな條件があると思いますが、その大きな要素の一つにお子さまの問題があると思います。
藤代:2020年には働き手が270萬人に減ると見られています。そうなると、日本に殘された働き手は、シニアか主婦か外國人労働者に限られるのではないでしょうか。一方で、働きたいけど働けないと言われている主婦は約156萬人いるといわれています。この人たちが働けるようになっていくことが、日本が空洞化せず、サービスや物流の擔(dān)い手をマッチングさせる即効性のある第一歩ではないでしょうか。
秋葉:物流業(yè)務(wù)自體はロボットがやるとすると、今までの物流センターで働くのとはまったく違う仕事をしてもらうことになります。それこそITの知識であったり、海外とのやりとりであったり、いわゆる作業(yè)とは異なるスキルが求められることになるので、そういう人たちに働いていただくことになります。そういう意味でも、働きたいお母さんたちは、大きな戦力になり得ます。
藤代:AmazonもZOZOTOWNも店舗がありませんから、大事なのは物流拠點になっていくわけです。Amazonで夜に注文すると、朝には屆くということは、実際の物流センター內(nèi)でのプロセスが非常に高機能化、高度化しているのだと思います。そういったことにきちんと応えうる人材でないといけません。先ほどおっしゃっていた物流施設(shè)內(nèi)での業(yè)務(wù)についても、物流施設(shè)の中で完結(jié)するわけですから、従來型の物流オペレーションで本當(dāng)にいいのかという話だと思います。女性や若いスタッフが丁寧に商品を扱っているということも、必要になってくるのではないでしょうか。衣料?ファッションがショップを通さずに手に屆くようになったとき、物流の中でどんな風(fēng)に扱われているか、誰がやっているかということは、消費者サイドから見ると気になる問題なのではないかと思います。物流の機能が変わるわけですから、物流施設(shè)は商品が単に一回通る場所ではなくなるということではないでしょうか。
秋葉社長がおっしゃるように、完全無人化もできるかもしれませんが、やはり何らかの人が関與することは必要です。その場合、結(jié)局誰が関與するのかが重要です。若年労働者が減っていってしまうと、その人たちの獲得は難しくなっていきます。そこを私たちは支援させていただきたいと思っています。
<第3回へ続く>
トークセッション ゲスト:學(xué)習(xí)院大學(xué) 経済學(xué)部経営學(xué)科教授 河合亜矢子
- 第1回 物流を知り、理解することから始まる
- 第2回 テクノロジーでネットワーク化し、全體最適を図る時代
- 第3回 現(xiàn)在の學(xué)生が業(yè)界の中心となる30年後、企業(yè)はどうあるべきかを考えたい
トークセッション ゲスト:セイノーホールディングス株式會社 執(zhí)行役員 河合秀治
トークセッション ゲスト:SBロジスティクス株式會社 COO 安高真之
トークセッション ゲスト:大和ハウス工業(yè)株式會社 取締役常務(wù)執(zhí)行役員 建築事業(yè)本部長 浦川竜哉
トークセッション ゲスト:株式會社Hacobu 代表取締役CEO 佐々木太郎
トークセッション ゲスト:明治大學(xué) グローバル?ビジネス研究科教授 博士 橋本雅隆
トークセッション ゲスト:株式會社 日立物流 執(zhí)行役専務(wù) 佐藤清輝
- 第1回 LOGISTEEDで物流の新領(lǐng)域へ
- 第2回 LOGISTEEDの「デジタルプラットフォーム」で次世代ロジスティクスへ
- 第3回 LOGISTEEDのSSCV技術(shù)が物流の世界を拡げていく
トークセッション ゲスト:流通経済大學(xué) 流通情報學(xué)部 教授 矢野裕児
トークセッション ゲスト:アスクル株式會社 CEO補佐室 兼 ECR本部 サービス開発 執(zhí)行役員 ロジスティクスフェロー池田和幸
トークセッション ゲスト:MUJIN CEO 兼 共同創(chuàng)業(yè)者 滝野 一征
トークセッション ゲスト:株式會社ABEJA 代表取締役社長CEO 岡田陽介
トークセッション ゲスト:株式會社ローランド?ベルガー プリンシパル 小野塚 征志
トークセッション ゲスト:株式會社アッカ?インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和
スペシャルトーク ゲスト:株式會社ママスクエア代表取締役 藤代 聡
スペシャルトーク ゲスト:株式會社エアークローゼット代表取締役社長兼CEO 天沼 聰
- 第1回 お互いのビジネスが「シェアリング」というコンセプトで結(jié)びついた
- 第2回 まずは見ていただいて、シェアリングの世界を感じていただきたい
- 第3回 シェアリング物流のコアで、かつ本質(zhì)的なところは、進化すること
秋葉淳一のロジスティックコラム
トークセッション:「お客様のビジネスを成功させるロジスティクスプラットフォーム」
ゲスト:株式會社アッカ?インターナショナル代表取締役社長 加藤 大和
トークセッション:「物流イノベーション、今がそのとき」
ゲスト:株式會社Hacobu 代表取締役 佐々木 太郎氏
「CREはサプライチェーンだ!」シリーズ
- Vol.1 究極の顧客指向で「在庫」と「物流資産」を強みとする「トラスコ中山」
- Vol.2 「グローバルサプライチェーン」で食を支える日本水産
- Vol.3 「當(dāng)たり前を地道にコツコツ」実現(xiàn)したヨドバシカメラのロジスティクスシステム
- Vol.4 「新たなインテリア雑貨産業(yè)」を構(gòu)築したニトリホールディングス
- Vol.5 物流不動産の価値を上げる「人工知能」が資産価値を上げる
- Vol.6「ロボット」が資産価値を上げる
- Vol.7「人財」が資産価値を上げる
- Vol.8「ビッグデータ」が資産価値を上げる
- Vol.9 AI、IoTがCRE戦略にもたらすこと
「物流は経営だ」シリーズ
土地活用ラボ for Biz アナリスト

秋葉 淳一(あきば じゅんいち)
株式會社フレームワークス會長。1987年4月大手鉄鋼メーカー系のゼネコンに入社。制御用コンピュータ開発と生産管理システムの構(gòu)築に攜わる。
その後、多くの企業(yè)のサプライチェーンマネジメントシステム(SCM)の構(gòu)築とそれに伴うビジネスプロセス?リエンジニアリング(BPR)のコンサルティングに従事。
2005年8月株式會社フレームワークスに入社、SCM?ロジスティクスコンサルタントとしてロジスティクスの構(gòu)築や改革、および倉庫管理システム(WMS)の導(dǎo)入をサポートしている。
単に言葉の定義ではない、企業(yè)に応じたオムニチャネルを?qū)g現(xiàn)するために奔走中。









