柔道の精神と創(chuàng)業(yè)者の教えから考える、
多様性時代の組織変革とキャリア創(chuàng)造
大和ハウス工業(yè)では、「事業(yè)を通じて人を育てる」を社是に掲げ、共に成長していく組織づくりを進(jìn)めてきました。一方、多様性の尊重が組織や社會でより重視されるようになった今、仕事の現(xiàn)場では、年代や専門分野、働き方のスタイルなどが違うメンバーたちと、どうコミュニケーションを取り、どう協(xié)力し合えばいいのか、悩む場面も少なくないはずです。
そこで今回のダイアログでは、改めて多様性とは何か、そして多様性を受け入れながら主體的に行動していくためには、どのような心構(gòu)えや実踐が必要なのかについて考えます。
対話するのは、創(chuàng)業(yè)70周年アンバサダーを務(wù)める柔道家の野村忠宏さんと、人事?サステナビリティ領(lǐng)域を擔(dān)當(dāng)している能村盛隆常務(wù)執(zhí)行役員です。柔道の理念と創(chuàng)業(yè)者が殘した言葉を手がかりに、組織や社會で、なぜ多様性を尊重するのか、その本質(zhì)を探ります。さらに、お二人の実踐と経験をもとに、多様性を前提とした組織において、個人が成長していくためのキャリア創(chuàng)造について語り合いました。これからの未來を創(chuàng)る社員の皆さんへのエールを込めて、創(chuàng)業(yè)70周年を記念した特別企畫としてお屆けします。
- ※本稿は2025年6月21日取材時點の內(nèi)容です。
CONTRIBUTORS
今回、対話するのは???


柔道を通じて心と體を鍛え、社會の役に立つ人を育てる
野村 忠宏
柔道家
株式會社Nextend代表取締役
大和ハウス工業(yè) 創(chuàng)業(yè)70周年アンバサダー(ハート大使)
柔道男子60kg級でアトランタ、シドニー、アテネで柔道史上初、また全競技を通じてアジア人初となるオリンピック3連覇を達(dá)成。2013年に弘前大學(xué)大學(xué)院で醫(yī)學(xué)博士號を取得。
2015年に40歳で現(xiàn)役引退後は、自身がプロデュースする柔道教室「DaiwaHouse presents 野村道場」を開催する等、國內(nèi)外にて柔道の普及活動を展開。スポーツキャスターとしても活動する他、2025年1月からは目黒區(qū)青葉臺に鍼灸接骨院とピラティススタジオを併設(shè)したコンディショニングラボ「Nom-Lab.(ノムラボ)」を設(shè)立し、ウェルネス事業(yè)にも取り組む経営者としても活躍している。


表層的な多様性ではなく多様性の本質(zhì)を経営に生かす
能村 盛隆
大和ハウス工業(yè)株式會社
常務(wù)執(zhí)行役員 人事?サステナビリティ擔(dān)當(dāng)
物流統(tǒng)括管理者 大阪?関西萬博擔(dān)當(dāng)
山口県出身。1986年に大和ハウス工業(yè)に入社して、本社人事部に配屬。人事部門でキャリアを積み、2014年10月に執(zhí)行役員、経営管理本部(戦略部門)人事部長。2021年6月から上席執(zhí)行役員として人財?組織開発擔(dān)當(dāng)、サステナビリティ擔(dān)當(dāng)、のちにヒューマンライツ擔(dān)當(dāng)。2022年4月より常務(wù)執(zhí)行役員、本店長、大阪?関西萬博擔(dān)當(dāng)や環(huán)境エネルギー事業(yè)本部長等を歴任。2025年4月より現(xiàn)職。
柔道の創(chuàng)始者と大和ハウス工業(yè)の創(chuàng)業(yè)者、それぞれの理念を示す言葉をひもときながら、多様性を尊重する組織において、個人が成長するために必要な考え方と実踐とは何かについて、一緒に考えてみましょう。
1
柔道の理念から考える、
「勝ち負(fù)け」を超えた組織の可能性


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柔道には、スポーツと武道の2つの側(cè)面があります。
1882年に嘉納治五郎(かのう?じごろう)師範(fàn)が創(chuàng)始した柔道は、稽古を通じて心と體を鍛え、その鍛えた心と體を使って社會の役に立てる、社會に貢獻(xiàn)できる人間を育成することを、大きな目的としていました。
この考え方は、『精力善用』という言葉で示され、今に続く柔道の理念となっています。
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実は私も、中學(xué)生の頃、3年ほど柔道をやっていました。ただ、當(dāng)時はどちらかというと格闘技、スポーツという側(cè)面のほうで捉えていましたね。野村さんがおっしゃる『精力善用』といった言葉で柔道を見直すのは今回が初めてかもしれません。
今日はこうした柔道の理念を、多様性の観點からビジネスに置き換えて考えるとき、どういったところに親和性があるのかについて、考えてみたいと思います。
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はい。もう一つ、『精力善用』に続く言葉として『自他共栄』があります。自分だけでなく、他人と共に栄えることを目指すことを意味します。これらは、柔道で最も大事にされる理念です。
柔道は、1964年の東京オリンピックをきっかけに、豪快な投げ技の魅力もあって、スポーツとして世界に知られることとなりました。
ただ、これほどまでに世界に普及したのは、日本で柔道を?qū)Wんだ先生方が世界各地に飛び出して、それぞれの國の価値観や文化に合わせて工夫しながら指導(dǎo)されたことに理由があります。
そして、特にフランスで深く愛されるようになりました。フランスの人口は日本の半分ほどですが、柔道人口は日本の4倍にもなっていて、そのほとんどは子どもたちです。
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海外でいう柔道、いわゆる「JUDO」はスポーツとしての柔道としての位置づけで、ルールのもとで得點を重ね、勝ち負(fù)けを競うものだと思っていましたが、それだけではないのですね。
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フランスの場合は多民族國家で、宗教も文化も人種も違う中で、學(xué)校教育だけでは擔(dān)えない人間教育を柔道が擔(dān)っています。柔道指導(dǎo)の指針としてのモラルコード(規(guī)範(fàn))が定められていて、柔道衣を著て畳に上がれば、人種も性別も年齢も関係なく、禮儀、尊敬、謙虛、友情といったものを?qū)Wぶことができる。だから保護(hù)者が教育としての柔道を信頼し、子どもの人間形成を柔道で育てることに期待しています。スポーツよりも人の道としての柔道ですね。
フランスでは、柔道の普及にあたって、子どもたちが飽きずに楽しめるよう、昇級ごとに黃帯?青帯など帯の色が変わるシステムを?qū)毪筏皮い蓼埂¥丹椁恕⒅笇?dǎo)にはゲーム性や學(xué)習(xí)課題を取り入れ、興味を引く工夫がされています。子どもの時に楽しい柔道を経験して、最低限の技術(shù)を身につけておけば、競技者にならずとも、ずっと柔道が好きなままです。技術(shù)も分かっていて、楽しい思い出がある人たちは、大人になっても柔道ファンとして、試合會場に來てくれる。そうした循環(huán)があります。
フランスのような柔道の在り方を、日本も學(xué)ぶべきだと思います。
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ビジネスの世界でも、売り上げや利益といった數(shù)字を競い、成長を目指すだけでなく、循環(huán)型の持続可能性や多様性といった、いわば経営哲學(xué)としての視點がより重視されるようになってきています。


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私自身もそうですが、やはり若い時は、能村さんがおっしゃるような勝負(fù)の世界で結(jié)果を出すところにフォーカスしていました。だからこそ、より高いレベルで高い目標(biāo)、夢を抱いてチャレンジできたのです。
私は3歳から柔道を始めましたが、勝てなかった時代がものすごく長く、親からも「柔道、やめていいぞ」と言われるレベルの選手でした。悔しさを抱きながらも、自分の未來への夢を信じて、真剣な努力を続けて、いつか自分は柔道でトップに立ち、自分を選手として愛せるようになりたいと、自分起點でやっていた頃は、『精力善用』『自他共栄』を常に意識できていたとは言い切れません。
海外に行けば外國人選手も同じ階級の選手はライバルであり敵。交流も一切していませんでした。ただ、さまざまな人との出會いを重ねるうちに、その本當(dāng)の意味が理解できるようになってきました。大切なことほど、経験を積んでいかないと分からない、というのが正直なところです。
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経験を重ねた上で、自分の心の成長がないと、言葉の核心を理解するのは難しいですね。
ダイバーシティという言葉についても、あらゆる企業(yè)が「多様性を尊重します」と言う現(xiàn)在の狀況を、正直私は危懼しています。言葉だけの表層的な多様性では、本質(zhì)的には何も変わらないでしょう。トレンドだからやるのではなく、企業(yè)経営にとってなぜ多様性や公平性、包摂という考え方が必要であるのか。いろんな見方をする人がいるから新しいアイデアが出る、複數(shù)の目で物事を見ることができることが、企業(yè)経営に資するものだということを、深く理解しなければならないと思っています。
2
「今一歩踏み込む」ことから始まる
『自他共栄』の実踐


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『自他共栄』という言葉の意味は、勝ち負(fù)けのウィン-ルーズではだめで、ウィン-ウィンの関係が大事だということだと理解しています。また、利益と損失が等しくなるゼロサムの考え方では、共に栄えることにはつながりませんから、お互いにプラス-プラスの関係でなければなりません。
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相手を敬い感謝して、助け合って支え合う心を育みながら、共に素晴らしい世の中をつくっていこう、という思いが詰まった言葉が『自他共栄』なんです。そう考えると、全ての人に対して『自他共栄』ができるかというと、実は、相手が尊敬できる人でないと難しいのですけれど。
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そうかもしれません。ビジネスの世界では、自分だけ、自社だけが儲かればいいという意識では成立しません。大和ハウス工業(yè)の創(chuàng)業(yè)者である石橋信夫は「『何をしたら儲かるか』という発想ではなく、『どのような商品が、どのような事業(yè)が世の中の役に立つか』を考えろ。會社は社會の公器なのだから」と社員に教えました。「共生」と「共創(chuàng)」の発想を常に持っておかないと、持続的な成長は難しいでしょう。自分のところさえ良ければいいという発想で経営をやるとしたら間違うと思います。今の企業(yè)のトップは『自他共栄』で経営を考えているし、そうあるべきだと思います。


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もう一つ、創(chuàng)業(yè)者の言葉に「今一歩踏み込め」というものがあります。「共生」「共創(chuàng)」もわれわれが大切にする言葉ですが、誰かがやってくれるのを待っているだけでは実現(xiàn)しないし、何も変わらない。周囲を変えることも難しい。
だとすれば、自分から変わり、今一歩踏み込んでいけば、結(jié)果的に周囲を巻き込んで社會を変えていけるかもしれない、そういう意味だと理解しています。
過去と他人は変えられないけれど、未來と自分は変えていける。だから自分から動いていかなければならないのです。
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自立性や主體性をもって考えて、実踐する。自分で、自分の技術(shù)やスキルをつくる。スポーツにおいても、おそらくビジネスにおいても、そのためのトレーニングが必要です。
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柔道を例に挙げれば、トレーニングでまず習(xí)うのは受け身ですね。受け身を徹底的に覚えてから亂取りの練習(xí)をして、そして試合に出る。當(dāng)然、いきなりオリンピック選手レベルにはなれません。仕事も同様で、いきなりトップ営業(yè)や社長になろうとしてもなれません。しっかり準(zhǔn)備して積み重ね、最後に一歩踏み込むことが大切です。若い世代の皆さんには、しっかり根を張って準(zhǔn)備することに取り組んでいってほしいと思っています。
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與えられるのを待つのではなく、自分から成長する環(huán)境をつくりに行く、理想とする人、指標(biāo)となるような人、信頼できる人を見つけるのも大事ですよね。
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私自身の経験でいえば、目標(biāo)となるような上司や先輩を見つけて、その人が10年で到達(dá)したことを、自分は5年で到達(dá)してみせよう、というようなこともやっていました。
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自分のキャリアをつくっていく段階では、やはり指導(dǎo)者の役割も大きいですね。指導(dǎo)者の言葉や在り方次第で、人は大きく変わっていくことを、私も學(xué)生時代から実感してきました。
ただ、指導(dǎo)者の立場を見ると、今は自分たちが育った頃とはコミュニケーションの仕方も変わってきていると思います。言葉掛けやコミュニケーションの中で気付きを與えたり、ちゃんと見ているよと伝えたり、努力したところは褒めてあげるとか。コーチや上司も勉強(qiáng)しながら、気付きを與えられるような存在を目指すことが求められていると思います。
3
「楽しむ力」が開く、多様性時代のキャリア創(chuàng)造


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例えば、同じ20代の選手に同じように指導(dǎo)しても、その受け取り方や解釈はひとりひとり違います。指導(dǎo)者が個々を見極めながら導(dǎo)くことで、期待する成果につながっていく。指導(dǎo)者には、すごく大変なことが求められていると思います。
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多様性に対応することは、確かに大変な部分もありますね。
これまでの企業(yè)、特に昭和の時代は単一的で排他的、不平等が當(dāng)たり前でした。でも、そのような見方では世の中の変化を乗り越えられないことに、日本企業(yè)も気が付きました。これは世界的な潮流でもあります。そして、変化から生じた課題は、従來型のパターン化された経営哲學(xué)だけでは解決できません。
今は人文科學(xué)的に、一つの絵を見てもいろんな見方があるのが答えです。単一解答ではなく、多様な見方ができることに気付いてきたからこそ、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンという言葉が出てきているのでしょう。揺り戻しもありますが、方向性は間違っていないと思います。
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東京オリンピック?パラリンピックで、キャスターの仕事をさせてもらった時、オリンピックは自分のフィールドですが、パラリンピックはそれまでの日常で障がいのある方と接する機(jī)會が少なかったため、最初はすごく気を遣いました。「こんなことを言っちゃダメかな」「聞いちゃダメかな」と。
でも実際に試合現(xiàn)場に行ったら、パラリンピアンたちはとても生き生きとしていて、アクティブでした。障がいがありながらも、身體機(jī)能をフルに使って世界と戦う人間のエネルギーがすごかった。変に気を使っていた自分が申し訳なくなりました。
一歩踏み込んで會話することで、その強(qiáng)さや素晴らしさを知ることができました。要らない遠(yuǎn)慮だったなと思います。仕事を通じて、今までの自分のフィールドとは違う人と會話し、強(qiáng)さとは何か、新しい気付きを得られました。
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自分とは違うフィールドの人から、新しい気付きを得る。まさに、多様性の本質(zhì)です。


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最後に、今日の対話は、これからの未來を創(chuàng)る若い世代の皆さんにエールを送ろうという趣旨もありますので、まずは私からまとめたいと思います。
20代、30代の頃は、楽しい仕事をやりたいと思うものです。しかしどんな仕事でも、実際にやってみると現(xiàn)実を知ることになります。そこで求めたいのは「楽しむ力」を持つことです。「こんなことをやるつもりじゃなかった、楽しくない、辭めたい」と考えるのではなく、今やっている仕事がどれだけ重要かを理解した上で、それを楽しむ力を持ってほしい。楽しむ力がないとやらされ感が生まれてしまいます。
そして、仕事を楽しもうと思えばまず好きになることが大切。「楽しいからやる」ではなく「やるから楽しくなる」という発想に変えることが重要だとお伝えしたいです。


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本當(dāng)にその通りですね。私も、「楽しい柔道」と言っていますが、できないことができるようになるという成長も楽しみの一つですし、期待してもらえるからこそプレッシャーも生まれます。私も勝てなかった時期に、プレッシャーがない人生は寂しいなと思ったことがあります。期待され、プレッシャーを感じられる人生の方が生きがいを感じます。
そして、今置かれている現(xiàn)狀で、自分が會社に何ができるのか、社會に何を提供できるのかを考えることが大切です。それを?qū)g現(xiàn)していく中で、いろんな人との出會いがあり、気付きと學(xué)びがあり、自己成長がある。それが喜びになります。
多様な選択肢がある中で「これは向いてない、次これ」と転々とするのもひとつですが、それでは何も見つからないと思います。仕事の魅力を知るためには深く追求し、考え抜き、継続することが必要で、時間もかかります。苦労や苦難もありますが、それを乗り越えた時に新しい世界が広がる。それが仕事の一番の魅力です。
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今日はありがとうございました。「楽しい柔道」から生まれる日本柔道の未來にも期待しています。


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まとめ
柔道/仕事を通じて、自分を成長させ、その力を社會に生かそう。柔道と大和ハウス工業(yè)に共通して受け継がれてきた理念は、複雑化した多様性の時代においてこそ、なおも組織変革とキャリア創(chuàng)造に向けた社員たちへのエールとして響く。一歩踏み込んで仕事を楽しみ、多様な価値観や能力を持つ人々と切磋琢磨することは、難しいながらも、やがて新たな自分と新しい価値を生み出していく。
対談の様子と當(dāng)日に行われた野村道場を
動畫でもご覧いただけます。
※本稿に掲載した各コメントは、対話者の経験に基づく個人の感想です。