
千葉県 房総半島の海側(cè)に位置するいすみ市には、創(chuàng)造的な暮らしを志す移住者が集まり、人と人のつながりの中からローカルイノベーションが生まれている。寫(xiě)真:山本尚明

サステナブルな街 特集
ローカルイノベーションは、つながりの豊かさで創(chuàng)られる
「いすみ市で始まっているサステナブルな地域づくり」
いすみ市?里山エリア(千葉県)
2021.02.26
新型コロナウイルス感染拡大の影響でテレワークが浸透する中、地方移住への関心が高まっています。內(nèi)閣府が三大都市圏居住者に行った質(zhì)問(wèn)では、全體で15%、20歳代では22.1%、東京都23區(qū)の20歳代に限れば35.4%もの人が地方移住への関心が高まったと答えました。
この変化は、全國(guó)の地方自治體が取り組んできた地方創(chuàng)生を?qū)g現(xiàn)しながら、國(guó)連が掲げるSDGs達(dá)成につながる可能性を秘めています。個(gè)人にとっても、地域にとっても、地球全體にとってもサステナブルな地方移住のキーワードである「ローカルイノベーション」について、東京から千葉県いすみ市の里山エリア(以下、いすみ)に移住した、greenz.jp編集長(zhǎng)の鈴木菜央さんにお話を伺いました。

出典)內(nèi)閣府「新型コロナウイルス感染癥の影響下における生活意識(shí)?行動(dòng)の変化に関する調(diào)査」2020年6月
鈴木菜央 さん
NPO法人グリーンズ代表理事/greenz.jp編集長(zhǎng) 1976年バンコク生まれ東京育ち。
「月刊ソトコト」で編集などを経て2006年にウェブマガジン「greenz.jp」を創(chuàng)刊。千葉県いすみ市在住。いすみローカル起業(yè)プロジェクト、いすみコミュニティベンチャースクール、いすみ発の地域通貨「米(まい)」、パーマカルチャーと平和道場(chǎng)、トランジションタウンいすみなどを共同で立ち上げ、いすみ市での持続可能なまちづくりに取り組む。「関係性のデザイン」を通じた持続可能な生き方、社會(huì)のつくりかたを?qū)g験?模索し、社會(huì)へのグッドプラクティスを発信し続けている。著作に『「ほしい未來(lái)」は自分の手でつくる』(講談社?星海社新書(shū))など。
いすみ市移住の理由は、サステナブルな社會(huì)をつくるために、まずは自分自身の生きる力をつくる
鈴木さんがいすみに移住したのは2010年のこと。2人のお子さんが3歳と1歳の時(shí)でした。
「このまま東京で子育てをするのか?サステナビリティをテーマに仕事をしている自分の暮らしはサステナブルなのか?と疑問(wèn)を感じていました。取材で出會(huì)う方々から刺激を受ける中で、サステナブルな社會(huì)づくりには地域とのつながりが欠かせないと思い至っていたのですが。東京だと忙しく仕事をするばかりで、地域とつながるイメージが湧きませんでした。」
仕事に追われてお金を稼ぎ、稼いだお金で消費(fèi)をして暮らしを回す都市生活。暮らしそのものをつくることに時(shí)間やエネルギーを振り分けられず、子どものお弁當(dāng)すらアウトソースするライフスタイルに限界を感じていたそうです。鈴木さんはまた、そうした都市生活が、遠(yuǎn)く離れた地方の資源に頼った脆弱なものであることを、19歳で體験した阪神?淡路大震災(zāi)の被災(zāi)地支援ボランティアを通じて気づいていました。そこで、サステナブルな社會(huì)をつくるために、まずは自分たち自身の生きる力を身につけようと、いすみへの移住を決めたのです。
「最初の3年くらいは理想どおりにはいかず、週6日、片道2時(shí)間近くかけて東京に通っていました。ただ家が遠(yuǎn)くなっただけで、正直デメリットのほうが多かったです。それが5日になり、4日になり。そうこうするうちにいすみでのつながりが増えて、あるとき市役所の方に聲をかけていただいた。これが大きなきっかけとなって、いすみで仕事をつくれるようになり、今回のパンデミックをきっかけに、ほぼ東京に行かなくても成立するかたちになってきました。」
今では、生み出す仕事の9割が地域の仕事に。移住するときに目指した「生きる力」は、暮らす地域に”隙間”を見(jiàn)つけることで得られたと鈴木さんは振り返ります。あらゆるものが自分以外の人の手でサービス化された東京では見(jiàn)つけられなかった隙間。自らの手で、地元の人々と共にサステナブルな暮らしをつくる余地が、いすみにあったのです。
「仕事の単価でいえば、もちろん東京のほうが高い。でも、減っている感じはなく、むしろ増えていく感じがします。それは、似たスキルを持つ人がいないので創(chuàng)造性をよりよく発揮できるし、地域の人と仕事をすることでつながりが豊かになっていくから。ひとつの仕事がすぐに次の仕事につながるし、いざというときに助けてもらえるネットワークがどんどん育って暮らしのレジリエンス(弾力性)も向上します。さらには、農(nóng)家さん、漁師さん、猟師さん、學(xué)校の先生、大工さん、行政の人、リタイアしているけどすごいスキルを持っているおじいさんなど、年齢もスキルも多様な人々と小さな単位ですぐにチームがつくれて、分野を超えた深い変化を地域全體にもたらせる仕事がやりやすいんです。」
仕事の報(bào)酬が、お金だけではなく、自分の暮らす地域がサステナブルになり返ってくる。鈴木さんにとっての地方移住とは、雙方が分?jǐn)啶丹欷縿簝P者?消費(fèi)者としてではなく、仕事と暮らしを通じて人生を魅力的にする創(chuàng)造者として生きるという、ライフスタイルのイノベーションでした。
個(gè)人のイノベーションから地域単位のローカルイノベーションへ
いすみでは、鈴木さんのように生き方を変え、創(chuàng)造的でサステナブルなライフスタイルを?qū)g現(xiàn)する人が増え続けています。
いすみローカル起業(yè)マップ 緑:ローカル起業(yè) 黒:取扱店舗
酒蔵の蔵人、プロスノーボーダー、寫(xiě)真家、料理家、不動(dòng)産會(huì)社事業(yè)者、建築士、珈琲職人、うどん職人、英語(yǔ)教師など、多様な人びとがそれぞれのかたちで起業(yè)している。出典:いすみローカル起業(yè)プロジェクト
中でも鈴木さんが注目するのが、複數(shù)のアパレル會(huì)社に勤めた方が始めた「アップサイクル工房」です。さびれたシャッター商店街の使われていなかった郵便局が、今では街のホットスポットに。服や服飾品を持ち込めば直してもらえるほか、地域中から集まった古著がストックされ、ミシンを使ってリメイクすることができます。
「アップサイクル工房は、2016年からいすみ市と一緒に始めた『いすみローカル起業(yè)プロジェクト』から生まれた事業(yè)です。これまでに參加した145人の方々は、本當(dāng)に多彩な発想を持っていました。事業(yè)アイデアを持つ人同士がつながることで、実現(xiàn)に向かって動(dòng)き出す勇気が出たり、ちょっとしたつまずきを助け合えたり、みんなに話すことで自分の中の解決策を見(jiàn)つけて前に進(jìn)める。アップサイクル工房も、「やりたい」と夢(mèng)を持った一人から始まり、つながりのおかげで場(chǎng)所を安く借りられ、シェアオフィスを併設(shè)して収益性を上げるというアイデアが加わり、リノベーションの作業(yè)をみんなが手伝うなど、地域のみんなの參加によってよりよく実現(xiàn)しました。」
アップサイクル工房「マチノイト」。ミシンを習(xí)える個(gè)別クラスや、著物をリメイクするワークショップなどを開(kāi)催している。寫(xiě)真提供:鈴木菜央、マチノイト
鈴木さんが、サステナブルな地域づくりの方法としていすみローカル起業(yè)プロジェクトを始めた背景には、2014年に取材で訪れたトットネス(英國(guó))での學(xué)びがあります。ロンドンから電車で4時(shí)間半の田舎にある人口約9,000人の街では「リコノミープロジェクト(※1)」に取り組んでいました。自分たちの暮らしが街の外にある資本や資源に頼っている度合いを數(shù)値化した結(jié)果、「食」「エネルギー」「住宅」「介護(hù)?健康」の分野で調(diào)べると、食は50%、エネルギーは99%を外に依存しており、その分お金も地域外に流出していることがわかりました。そこで、自分たちの力で地域にあるものを活用することで、流出するお金を地域內(nèi)に還流させようと、自転車交通を広めたり、共同菜園を始めたり、DIYグループをつくって住宅の斷熱工事をしたりといった、再生を進(jìn)めていたのです。
※1 リコノミー(Re + Economy)とは、地域経済を再生する、取り戻すという意味の造語(yǔ)
「なぜ、サステナブルという考え方が必要になっているのかといえば、グローバルな分業(yè)體制と消費(fèi)文明が生み出した『他人事』=無(wú)関心によって、知らないうちに次世代が生きるための資源を奪っているからです。持続”不”可能を持続可能に反転させるには、この『他人事』を『自分事』に反転させるしかない。リコノミープロジェクトからそのことを?qū)Wび、暮らしに必要な多くのことを『自分事』に変えていくローカル起業(yè)の擔(dān)い手をエンパワーすることで、サステナブルな地域をつくろうと考えました。」
エンパワーするとは、起業(yè)家の卵同士や、起業(yè)家の卵と地域のキーパーソン、つまり人と人をつなげ、出來(lái)たつながりを豊かに育むこと。物質(zhì)的に大規(guī)模な投資や開(kāi)発をしなくても、つながりによって、埋もれていた資源が次々に生かされていく変化を、鈴木さんは目の當(dāng)たりにしています。
鈴木さんが注目するローカルイノベーションの先進(jìn)地、舊?藤野町(神奈川県相模原市)。養(yǎng)鶏をシェアすることで食料自給率を上げ、食料の調(diào)達(dá)を「自分事」にしながらつながりを豊かにする”地域チキン”の取り組みが行われている。寫(xiě)真提供:鈴木菜央
ローカルイノベーションはサステナブルな社會(huì)をつくるチャンス
「革命は辺境で起きるという言説がありますが、これは辺境ほど課題が多く、人々の間に危機(jī)感があるからではないでしょうか。現(xiàn)代でいえば、グローバルな消費(fèi)文明がうまくいっている中心部からは変えようという機(jī)運(yùn)は高まりにくい。そういう意味では、いすみのような地方は人口減という存亡に関わる課題を抱えているので、イノベーションが起こりやすいと言えます。ただ、田舎でしかできないかと言えばそんなことはありません。都市部でも、人々が課題や危機(jī)感を共有できるなら、暮らしや地域や社會(huì)をサステナブルにつくり変えるチャンスがあると思います。」
いすみで湧き上がる巻き起こる希望が伝わったのか、パンデミック後は市役所や不動(dòng)産會(huì)社に、移住の問(wèn)い合わせが殺到しているそう。これまでは、場(chǎng)所に縛られないクリエイターや、リタイア層が移住者の中心でした。今はこうした層に加え、初めからフリーランスで働くと決めている若者や、リモート勤務(wù)を続けながら2拠點(diǎn)を前提に移り住む會(huì)社員ファミリーなど、多様な人たちがいすみに魅了されています。
今後は、地域に元々ある自然資源と移住者によって増えている人的資源を生かして雇用を生み出し、ローカル経済の中核を擔(dān)う企業(yè)をつくりたいと夢(mèng)を描く鈴木さん。「地域おこし協(xié)力隊(duì)員」(※2)の制度を使い、3年後に起業(yè)を目指す、気概を持った移住者を地域に呼び込む計(jì)畫(huà)です。
※2 都市部から條件不利地域に移住した者を地方公共団體が「隊(duì)員として」委囑し、「地域協(xié)力活動(dòng)」を行いながら、その地域への定住?定著を図る取り組み
「移住して好きなことで仕事をつくり、一人で食べていける人が増え、家族を養(yǎng)える人も増えてきました。そこで、次の段階に進(jìn)みます。地域の人や自然を生かしながら、リソースを調(diào)達(dá)してつくったモノやサービスを地元の人が購(gòu)入すれば、企業(yè)が払うお給料?従業(yè)員の支出?企業(yè)の売り上げ?企業(yè)が払うお給料?… というかたちで価値とお金が地域內(nèi)をぐるぐる回り、ローカル経済の成長(zhǎng)に何重もの効果があります。そういう循環(huán)を生み出せる企業(yè)をつくりたい。」
SDGsに掲げられた、環(huán)境?社會(huì)?経済にまたがる課題は複雑で巨大です。でも、どんなに大きく見(jiàn)える環(huán)境?社會(huì)?経済も、目の前の仕事や暮らしと無(wú)関係にあるわけではなく、一人ひとりの選択がつくりあげています。では、私たちは足元の仕事と暮らしをいかにサステナブルに変えることができるのか。いすみで進(jìn)むローカルイノベーションに多くのヒントがありました。
ローカルイノベーション 3つのポイント
- 他人事の消費(fèi)者
自分事の創(chuàng)造者 - 労働と消費(fèi)が分?jǐn)啶筏皮い?span>
仕事と暮らしが分かち難く結(jié)びついている - グローバルに分業(yè)して大規(guī)模化?効率化する
ローカルでつながり合って生かし合う
人と人の交流から新しい文化が生まれる“暮らす森”
全國(guó)には、いすみ以外にも移住者が関わることで地域のサステナビリティが高まっている事例があります。北海道の函館から車で1時(shí)間ほどの郊外に位置する鹿部町は、人口約4,000人のうち約600人が大和ハウス工業(yè)が展開(kāi)する森林住宅で暮らす移住者や2拠點(diǎn)居住者。1974年から入居が始まり、47年経った現(xiàn)在では町議會(huì)議員を務(wù)める人材も輩出し、まちを共に盛り上げるコミュニティになっています。森林住宅の擔(dān)當(dāng)役員である原納浩二は次のように話します。
「森林住宅のコンセプトは”暮らす森”。従來(lái)の別荘は、お金持ちが所有して避暑のためにお忍びで滯在したり、隠居して終の住処にするイメージではないでしょうか。自然が豊かな場(chǎng)所にあることは共通していますが、森林住宅が想定する住まい方はより多様です。『十人いれば十通り。住まい方はオーナー様が考える』ことを、強(qiáng)く意識(shí)しています。」
原納浩二
大和ハウス工業(yè)株式會(huì)社
上席執(zhí)行役員
都市開(kāi)発部長(zhǎng)、都市開(kāi)発部門(mén)擔(dān)當(dāng)
移住定住?季節(jié)滯在?週末住宅など、多様な住まい方を受け入れる考え方がフィットし、創(chuàng)造性が豊かな人々が人生の幅を広げるために買い求めるケースが多いそう。そうした人々は活動(dòng)的で交流を楽しむ傾向が強(qiáng)いため、大和ハウス工業(yè)ではオーナー様同士が交流できる防災(zāi)イベントやコミュニティサロン、カルチャーフェスなどの場(chǎng)を提供してつながりをサポートしています。また、全國(guó)14箇所の暮らす森をオンラインでつなぐサロン「寺子屋茶論(てらこやさろん)」では、地域をまたいだ交流も生まれています。
「鹿部のオーナー様と能登のオーナー様が寺子屋茶論で知り合い、お互いのところに遊びにいってみたいなど、今後は地域の関係人口?交流人口増加に寄與していくことも期待されます。こうした楽しみ方をされるオーナー様や、お試しで移住を體験したいというご検討者様向けに、暮らすように泊まれるショートステイハウスとロングステイハウスの整備を進(jìn)めています。」
左:暮らす森TERRACEのシェアサロン(能登 志賀の郷リゾート)
右:寺子屋茶論では毎回趣向を凝らしたイベントを開(kāi)催
森林住宅は元々、過(guò)疎地と自然を求める都市居住者をつないで地方創(chuàng)生に貢獻(xiàn)しようと、創(chuàng)業(yè)者の石橋信夫が始めたプロジェクト。現(xiàn)在は全國(guó)5市町村と連攜協(xié)定を結(jié)び、居住者と地域の両方が幸せな移住や交流のかたちを意識(shí)的につくっています。
「杵築は釣り好きのオーナー様が多く、漁協(xié)の漁師さんたちと楽しく交流されています。また、溫泉を活用して開(kāi)いた足湯は、地元の高齢者のみなさんとの憩いの場(chǎng)になっています。こうしたしかけによって、地域のみなさんにも笑顔が増え、新天地となるオーナー様にとっても居心地のいい森林住宅でありたい。そして、人と人が交流することで化學(xué)反応が起こり、文化が生まれる場(chǎng)所にしていきたいと思っています。」
森林住宅地は様々な暮らしを?qū)g現(xiàn)するフィールドです。
新しい住まい方 ”暮らす森” 森林住宅地はこちら
オフィスに通勤しなくてもいい働き方が広がり、地方に拠點(diǎn)を持つことを検討する人は著実に増えているなか、そのような方々が自由に動(dòng)けるように、所有権を購(gòu)入するだけではない森林住宅との付き合い方も用意してハードルを下げていきたいと原納は話します。福岡から車で約2時(shí)間の阿蘇の暮らす森で、新たなエリアを開(kāi)発。JHEP認(rèn)証(※3)の最高等級(jí)を取得し、1區(qū)畫(huà)を約1,000m2に設(shè)定して原風(fēng)景を殘すというコンセプトに、多くの人が共感しているそう。
地方創(chuàng)生と働き方改革、続くコロナ禍でますます注目を浴びる中、日本中のローカルで、サステナブルな社會(huì)と暮らしづくりの可能性が芽吹いています。
※3 日本生態(tài)系協(xié)會(huì)が運(yùn)営する、生物多様性の保全や回復(fù)に資する取り組みを定量的に評(píng)価、認(rèn)証する制度
文中で紹介した森林住宅地の詳細(xì)情報(bào)はこちら
- ?鹿部:ロイヤルシティ鹿部リゾート
- ?能登:能登 志賀の郷リゾート
- ?杵築:ロイヤルシティ別府灣杵築リゾート
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