メニュー
Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。
特集:「働き方」のウェルヒ?ーインク?を考える
2025.1.31
仕事や家事に追われるうちに、気づけば1日が終わっている。スマホでSNSはチェックするけれど、そういえばめっきり本を読まなくなった。そんな昨今の働き方、生活習(xí)慣を、著書(shū)『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』で言語(yǔ)化した文蕓評(píng)論家の三宅香帆さん。多くのビジネスパーソンの共感を呼び、現(xiàn)在23萬(wàn)部突破のベストセラーになっています。
三宅さんは本書(shū)を通して「全身全霊をやめて、半身で働こう」と提言しました。「全身全霊」で取り組むことは美徳と考えられがちですが、三宅さんは「半身」の働き方を當(dāng)たり前にすることで、それぞれの人生が豊かになり、他者も尊重できる——まさにウェルビーイングな狀態(tài)に近づくのだと語(yǔ)ります。
私たちはこれからどんな働き方を目指すべきなのでしょうか。今回の特集「働き方のウェルビーイングを考える」について、三宅さんとともに掘り下げます。
三宅さんが『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』を書(shū)いたきっかけには、自身の體験があったと言います。社會(huì)人一年目、人材會(huì)社で勤務(wù)する中、大好きな本を読めなくなっていることにふと気づきました。
「朝9時(shí)頃に出社して、夜8時(shí)頃に退社し、暦通り土日は休むといった一般的な働き方をしていて、特にハードワークだったわけではありません。それでも、元々好きだった海外文學(xué)や古典に手が伸びなくなっていました。SNSをチェックすることはできるのに、頭が本を読むモードにならないんです。社會(huì)人になると、好きなことに時(shí)間を割くのがこんなに難しいのかとショックを受けました」。
學(xué)生時(shí)代は文學(xué)を研究し、好きな本をたくさん買うために就職したといってもいいほど、読書(shū)家だった三宅さん。會(huì)社を退職し、フリーランスという働き方を選択、「本を読める生活」を選びました。
こうした経験をインターネット上に綴ると、多くの共感が寄せられます。「好きなバンドを追いかけられなくなった」「好きだった美術(shù)館にめっきり行かなくなった」……。三宅さんはさまざまな反響を通して、今の日本社會(huì)では、労働と文化的な生活を両立しづらい狀況にあると感じたのです。
では、働いていると文化的な生活を営みづらくなるのはなぜなのでしょうか。三宅さんは、現(xiàn)代の労働が、労働以外の時(shí)間を犠牲にすることで成り立っていると考えました。そこで提唱するのが「全身全霊をやめて、半身で働く」ことです。
「2023年に放送されたNHKの『100分deフェミニズム』で、社會(huì)學(xué)者の上野千鶴子先生が女性の働き方を『半身で関わる』と表現(xiàn)していました。男性は全身全霊で働きやすいけれど、女性は身體の半分が家庭、もう半分が仕事にある、と。私はそれを聞いた時(shí)、むしろ男女ともに半身で働くほうが理想的だと思ったんです」。
そもそも、仕事に全身全霊を捧げられるということは誰(shuí)かのサポートがある場(chǎng)合が多いと三宅さんは指摘します。専業(yè)主婦?主夫世帯よりも共働き世帯が多い現(xiàn)代では、その働き方は難しいといえるでしょう。男女それぞれが、半分を仕事、もう半分を育児や介護(hù)、趣味、副業(yè)などに使えたほうがいい、と続けます。
「週5、フルタイム勤務(wù)、殘業(yè)ありで働くことが、正社員の必須條件のようになっていますが、時(shí)間で規(guī)定せず、成果で給料を支払うという発想がもっとあっていいはずです。『時(shí)短勤務(wù)』という言葉にも私は違和感がありますね。もちろん、全身全霊な働き方を否定しているわけではないですし、私も全身全霊で働く時(shí)期はありました。ですが、全ての人にとってのスタンダードではなくてもいいのではないか、と思うんです」。
また、半身で働くのは、決して"楽をする"ということではありません。
「一つのことに集中できる『全身全霊』のほうが、むしろ楽な面があると思います。『半身』だとやることが多く、仕事を早く終える必要があります。つまり同じ量の仕事を半分の時(shí)間で頑張らないといけない。さらには、仕事以外で自分の役割やアイデンティティを見(jiàn)いださないといけないから大変です。でもその労力をかけても、全身全霊から半身へシフトしていく必要があるのではないでしょうか。育児や介護(hù)と仕事をどう両立するのか、少子化や労働人口の減少とどう向き合うのか。そうした日本の課題を解決するには、半身で働くことが當(dāng)たり前の『半身社會(huì)』を?qū)g現(xiàn)したほうがいいと思います」。
昨今、忙しい日々を送る人たちに、「本を速読する」「映畫(huà)を早送りで見(jiàn)る」といったタイムパフォーマンスの良い情報(bào)収集が求められています。そんな風(fēng)潮の中、三宅さんが重視しているのは、「短期的に見(jiàn)ると何の役に立つのかわからないもの=ノイズ」です。
「効率化を図る中で、自分が今知りたいことの周辺知識(shí)や背景にある文脈を、余分な情報(bào)だとして省いてしまうことがありますよね。私はそういったものを『ノイズ』と稱しています。私自身、會(huì)社員時(shí)代に"仕事に関する本"であれば読めたんです。でも、今すぐ必要な情報(bào)や知識(shí)だけを入手していると、自分が本當(dāng)に興味のあるものを発見(jiàn)しづらく、人とは違う得意分野もなかなか生まれません。あえてノイズを取り入れることも大事なのではないでしょうか」。
ノイズを取り入れる余裕のある社會(huì)は、三宅さんにとっては「働きながら本を読める社會(huì)」。つまり自分の関心事や、長(zhǎng)期的な視野で勉強(qiáng)したいことに取り組む時(shí)間を持てる社會(huì)と言っていいかもしれません。
「近頃、読みたい本を読めているか、見(jiàn)たい映畫(huà)を見(jiàn)られているかということは、自分が今ウェルビーイングな狀態(tài)にあるかどうかのバロメーターの一つにもなると思います。そうはいっても、個(gè)人としては目の前の仕事に追われ、十分な時(shí)間が取れない場(chǎng)合も多いでしょう。やはり社會(huì)全體で働き方や時(shí)間の使い方について議論できるといいですね」。
三宅さんは自分の感情を大切にしてほしいと話します。
「臨床心理士の信田さよ子さんの『家族と國(guó)家は共謀する』という本で、仕事一筋だった60代、70代の男性が、自分の感情を言語(yǔ)化することが苦手だったりすると書(shū)かれていました。仕事をする中で、感情を脇に置かなければいけないこともあるでしょう。でも仕事のために自分の感情を麻痺させると、次第に他人の感情にも鈍感になってしまうかもしれません。さまざまなハラスメントの問(wèn)題も、実はこうしたところから來(lái)ているのかもしれません。一人ひとりが感情を大切に、自分の人生そのものの優(yōu)先順位を上げられるといいなと思います」。

文蕓評(píng)論家。1994年、高知県生まれ。京都大學(xué)大學(xué)院人間?環(huán)境學(xué)研究科博士前期課程修了。大學(xué)院在學(xué)中から文蕓評(píng)論家として活動(dòng)し、2017年に『人生を狂わず名著50』を出版後、大手人材會(huì)社に就職し兼業(yè)作家となる。『文蕓オタクの私が教える バズる文章教室』『(読んだふりしたけど)ぶっちゃけよく分からん、あの名作小説を面白く読む方法』などを執(zhí)筆した後、2022年に獨(dú)立。2024年発売の『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』は、23萬(wàn)部を超えるベストセラーに(2024年11月時(shí)點(diǎn))。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現(xiàn)に向け、様々な取り組みを進(jìn)めていきます。

Sustainable Journeyは、
2024年3月にリニューアルしました。