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2024年3月にリニューアルしました。
連載:いろんな視點(diǎn)から世の中を知ろう。専門家に聞くサステナブルの目
2025.8.27
オランダ?アムステルダム在住のサステナビリティ?スペシャリスト、西崎こずえです。私が住んでいるアムステルダムをはじめ、ヨーロッパでは近年、猛暑や熱波が深刻化しています。
そこで今回は、フランス?パリ、スペイン?バルセロナ、オランダ?アムステルダム、ギリシャ?アテネ、ドイツ?ベルリンといった主要都市の取り組みをご紹介。歐州各國の事例をひも解きながら、気候変動(dòng)時(shí)代に求められる都市づくりを見ていきます。
連日、日本では猛暑日が記録されています。しかしヨーロッパも同じような狀況で、今年はフランスやスペイン、ポルトガルなどの一部では40度を超える日も多く、インペリアル?カレッジ?ロンドンなどの研究グループが、「6月23日から7月2日までの10日間で、ヨーロッパの12都市では約2,300人が熱波により死亡した」と発表しました。また、このうち約1,500人(全體の約65%)の死因は、人為的な気候変動(dòng)によるものと分析されています。
Photo by Horacio Villalobos#Corbis/Getty Images
猛暑はここ數(shù)年の問題ではありません。2003年の「ヨーロッパ熱波」は、フランス南部で気溫が46度に達(dá)して、當(dāng)時(shí)の最高記録を更新しました。1540年以來の記録的な暑さとされ、熱波が2週間近く続き、フランスでは約1萬5,000人、ヨーロッパ全土では約7萬人が死亡したと推定されています。
こうした狀況を受け、歐州では暑さ対策は喫緊の課題であるとし、各地で「暑さに強(qiáng)いサステナブルシテ?!工丐我菩肖蜻M(jìn)めてきました。
まず注目したい取り組みが「グリーンインフラ※1」の拡充です。近年のヨーロッパの熱波は記録的な猛暑をもたらし、都市部ではヒートアイランド現(xiàn)象※2が深刻化、緑地や水辺を活用した都市の冷卻策に力を入れています。実際、國際的な研究チームによると、歐州各都市の樹木割合を14.9%(2023年時(shí)點(diǎn))から30%にした場合、都市の植樹は夏の気溫を0.4度抑え、暑さ要因の死亡を39.5%減らすという結(jié)果が出ています。
パリでは2026年までに17萬本の植樹を目標(biāo)とする「都市の森」計(jì)畫が進(jìn)行しています。さらに、校庭を緑地化して市民に開放する「オアシス計(jì)畫」によって、子どもから高齢者まで誰もが涼める空間を整備しています。また校庭だけではなく、保育園や小學(xué)校の周辺道路を歩行者天國とし、なおかつ緑化を推進(jìn)する「Rues aux écoles(スクール?ストリート)」を、2026年までに100本をつくることを目標(biāo)としています。
夏のパリでは、自然の中で涼を取るのがひとつの過ごし方として定著しており、夏季限定で夜間開放される公園もあります。
パリにおける緑地と他の土地表面の冷卻効果を比較したもの。緑地化している箇所の気溫が他と比べて低いことが分かります(Marando et al., 2022/出典:European Commission ? EU)
アテネでは、歐州で初めて「Chief Heat Officer:CHO(最高熱波対策責(zé)任者)」を任命しました※3。アテネは、高齢者など弱い立場にある都市生活者が、熱波や猛暑によってさらされるリスクを低減しようとする、歐州中心の都市間連攜「EHRA(Extreme Heat Resilience Alliance)」の創(chuàng)設(shè)メンバーでもあり、現(xiàn)在緑地化や公園整備、舗裝の白色化などを進(jìn)めています。
アテネのように、高齢者や低所得者など熱波に脆弱とされる層に対して、歐州各都市は社會(huì)的支援を強(qiáng)化しています。パリでは800カ所以上の「冷卻スポット」を公開して、誰でも避難できるようにしていますし、バルセロナでは、公園や學(xué)校、博物館を「気候シェルター」として指定しました。冷房や緑陰を備えた避難先を市內(nèi)各所に配置し、市民の安全を守っています。ベルリンでは広場やバス停にミストシャワーを設(shè)置し、猛暑時(shí)の一時(shí)避難スペースを提供しています。
他にも、フランスでは獨(dú)居高齢者に電話や訪問で安否確認(rèn)を行う制度を整備しています。ドイツでは低所得世帯への扇風(fēng)機(jī)貸與、フランスでは介護(hù)施設(shè)へのエアコン補(bǔ)助金、スペインでは夏季の電力料金補(bǔ)助など、経済的な支援にも力を入れています。
こうした背景には、そもそも歐州ではエアコンの普及率が低いことが大きく関與しています。國際エネルギー機(jī)関(IEA)のデータによると、2022年のエアコン普及率は米國では90%でしたが、歐州ではわずか19%にとどまりました。
ちなみにエアコンの普及率が低い理由としては、古い建物が多いため構(gòu)造的に設(shè)置が難しいことに加えて、建物そのものが改築しにくいという歴史的建造物保護(hù)の規(guī)制などが挙げられます。
建物の斷熱や設(shè)計(jì)も重要な暑さ対策の柱です。南歐では厚い石造りや鎧戸など伝統(tǒng)的な設(shè)計(jì)が見直され、現(xiàn)代建築に再導(dǎo)入されています。アテネでは「クールルーフ」と呼ばれる白色塗裝が普及し、室溫上昇を防いでいます。
2010年に科學(xué)誌『Geophysical Research Letters』に掲載された研究結(jié)果では、「猛暑から都市の住民を守るには、都市全域規(guī)模で建物の屋根を白く塗るか、高反射率塗裝を施すのが最も効果的」だとされ、この方法により、英國のグレーター?ロンドン※4を?qū)澫螭趣筏骏猊钎牖芯郡扦稀⒍际腥wの外気溫が1.2度下がったといいます。
フランスやドイツでは「緑のカーテン」や屋上庭園によって斷熱効果と蒸散作用を両立させています。オランダや北歐の都市では、風(fēng)を通す窓設(shè)計(jì)や日射遮蔽ブラインドが導(dǎo)入されるなど、エアコンなどに頼らず自然換気による「パッシブクーリング」が注目されています。
こうした工夫は、単なる暑さ対策にとどまらず、省エネルギーや快適性向上といった都市のサステナビリティ戦略とも結(jié)びついています。猛暑で冷房需要が増す中、エネルギー効率の改善は欠かせません。EUの行政執(zhí)行機(jī)関である歐州委員會(huì)が2020年に発表した「A Renovation Wave for Europe(歐州リノベーション?ウェーブ)」では、既存建築の斷熱改修を進(jìn)め、冷暖房需要を減らす取り組みが掲げられています。スペインやイタリアでは、省エネ性能の高いヒートポンプ導(dǎo)入を補(bǔ)助していますし、フランスでは駐車場に太陽光パネルの設(shè)置を義務(wù)化し、車の日よけと発電を同時(shí)に実現(xiàn)しています。
また、パリやフィンランドのヘルシンキでは「地域冷房ネットワーク」が整備され、川の水や再エネを活用して都市全體を効率的に冷卻しています。これは停電リスクを減らすだけでなく、CO?排出削減にも貢獻(xiàn)しているのです。
※4:イギリス、イングランドの首都ロンドンを包含する広大な行政區(qū)域です。単なる都市ではなく、32のロンドン特別區(qū)とシティ?オブ?ロンドンからなる、33の地方行政區(qū)畫で構(gòu)成される複雑な組織體。
他にもさまざまな暑さ対策がありますが、そもそもなぜヨーロッパは、こうした取り組みを積極的に導(dǎo)入、実施できるのでしょうか。それは、単なる暑さ対策にとどまらず、EUの「歐州グリーンディール※5」や「気候適応戦略」と密接に連動(dòng)しているからです。
都市緑化や斷熱強(qiáng)化は、ヒートアイランド緩和であると同時(shí)に溫室効果ガス削減に寄與し、公共交通やエネルギー施策と組み合わせて持続可能な都市を形づくります。歐州委員會(huì)は、2030年までに150以上の「気候レジリエント都市」を育成する目標(biāo)を掲げており、パリやバルセロナ、アムステルダム、アテネ、ベルリンはその代表的な事例といえるでしょう。
さらに、ヨーロッパ各都市の暑さ対策は、単に気溫を下げるだけでなく、ウェルビーイングを高める都市づくりにも直結(jié)しています。市民の健康を守り、自然と共生しながら、持続可能な未來を描く。こうした取り組みは、猛暑が日常となるこれからの世界で、私たちが目指すべき都市の姿を示すヒントとなるはずです。
※5:EUが掲げる包括的な気候変動(dòng)対策。2050年までにEUを溫室効果ガスの排出実質(zhì)ゼロ(クライメイトニュートラル)にすることを目指し、経済成長と環(huán)境保全の両立を図ることを目的としています。
2020年1月よりオランダ?アムステルダムに拠點(diǎn)を移し、サーキュラーエコノミーに特化した取材?情報(bào)発信?ビジネスマッチメイキング?企業(yè)向け研修プログラムなどを手がける。日本國內(nèi)でサーキュラーエコノミーに特化した唯一のビジネスメディア「Circular Economy Hub」編集部員。2024年4月からはオランダのサステナビリティに特化した経営コンサルティングファーム「Except Integrated Sustainability」に參畫。サステナビリティコンサルタントとして活躍する。
大和ハウスグループも「生きる歓びを、分かち合える世界」の実現(xiàn)に向け、様々な取り組みを進(jìn)めていきます。
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