都市には次々と新しい風(fēng)景が生まれる。施工現(xiàn)場の現(xiàn)場監(jiān)督として指揮を執(zhí)る照﨑も、多忙な日々を過ごす。ここ數(shù)年は関東を中心にホテルの施工を擔(dān)當(dāng)。今はJR山手線の近くにある商業(yè)施設(shè)の現(xiàn)場にいた。

朝禮では、デジタルサイネージを使って作業(yè)內(nèi)容や注意事項を共有する。これまで情報を伝える手段は紙や口頭での指示だったが、アナログからデジタルへと移行した。デジタルサイネージは、大和ハウス工業(yè)が急ピッチで進(jìn)める「建設(shè)DX（デジタルトランスフォーメーション）」の一端だ。

建設(shè)業(yè)界、特に施工現(xiàn)場は今、大きな課題に直面している。人手不足や2024年問題といわれる時間外労働の上限規(guī)制、そしてデジタル化やリモートワークが進(jìn)む社會から周回遅れで取り殘されたアナログなワークフローなどが挙げられる。

施工現(xiàn)場を中心で支えるのは経験豊富な施工店の職方たちで50代、60代が多い。彼らのような熟練工が引退すれば、匠の技で乗り越えてきた現(xiàn)場も滯る可能性が高くなる。幸い大和ハウス工業(yè)は協(xié)力會社に恵まれ、人手を確保できているが、今後はそうもいかなくなる気配が濃厚だ。去年の夏は型枠大工が手配できず、ようやく沖縄から來てもらうこともあったそうだ。

時間外労働の上限規(guī)制は、大和ハウス工業(yè)だけでなく建設(shè)業(yè)界全體がどう対処すべきか頭を悩ませている。原因の一つは、工事部門の業(yè)務(wù)タスクがとんでもなく多い點にある。照﨑がある現(xiàn)場で作成した図面などのデータを數(shù)えたところ、その數(shù)は約40萬にものぼった。その上、「建築系施工管理の業(yè)務(wù)量を正確に把握するのは、雲(yún)の量を把握するのと同じぐらい難しい」と言う。手掛ける建物の多くは、製造業(yè)やシステム建築と違ってオーダーメイドのため、著工後、設(shè)計変更がたびたび起こる。刻一刻と変わる狀況に対応していかなければならず、自分で仕事の時間配分や量を決めづらい點も原因の一つだと考えている。

2019年、照﨑はBIM※推進(jìn)プロジェクトにDX率先者として加わることになり、後に率先垂範(fàn)する者として建築系DXリーダーに任命される。2017年からBIMが推進(jìn)されてきた設(shè)計部門に続き、施工部門でも取り組みが始まったのだ。

「そもそも施工現(xiàn)場のDXって何だろう？何から手を付ける？」
招集された數(shù)名のDX率先者とDX推進(jìn)部メンバーで集まってみたものの、誰も正解がわからない。まずは現(xiàn)場で行われる業(yè)務(wù)にデジタルツールを用いるなど、さまざまな試行を繰り返すうちに一つのことが見えてきた。

當(dāng)初は「BIM=3次元CAD」だと思っていたが、活動開始から約１年が過ぎた頃から、BIMはデジタルデータを蓄積し、それらを活用することで業(yè)務(wù)を効率化する畫期的なワークフローだということに照﨑も気付き始めた。「BIMは大きな中心軸で、BIMに絡(luò)むアプリケーションやIoT測器、ICT建機(jī)が連動することで、さらなる業(yè)務(wù)の効率化が図れる」と感じている。

※Building Information Modeling（ビルディング?インフォメーション?モデリング）の略稱。3次元の建物のデジタルモデルにさまざまな屬性情報を追加し、あらゆる工程で情報を活用する畫期的なワークフロー。

DX率先者としての活動が始まって約１年後の2020年9月、大和ハウス工業(yè)とAutodesk社はBIMやDXをさらに加速させる目的で、戦略的連攜に関する覚書を交わした。Autodesk社のスタッフは、照﨑たちの固定概念を次々とぶち壊した。「できない」と思っていたことを、「なぜできないんですか？」と疑問を投げかけてきたのだ。

例えば、従來設(shè)計への質(zhì)疑はメールや電話、直接會うなどして情報を得、手書きで図面に書き込んでいた。Autodesk社は「それはエビデンスとして蓄積されますか？後々分析できますか？」と問う。當(dāng)然できないし、必要性を感じていたが対処法を探すという発想に至らなかった。

しかし、「できない」ままでは進(jìn)化はない。まずはAutodesk社のソフトウエアを活用し、PDFに質(zhì)疑や回答期限をテキストで打ち込み、全ての質(zhì)疑には「その質(zhì)疑に至った原因」など、タグを付けて分類するようにした。そうすることで、電話１本30秒で済んでいた従來の方法よりも時間はかかるが、工事業(yè)務(wù)を圧迫している原因を見つけ出し、蓄積して分析できるようになり、數(shù)年後には負(fù)擔(dān)が一気に減るだろう。

Autodesk社との協(xié)働が軌道に乗った頃、米國で毎年開催されるグローバルイベント「AU（Autodesk University）」の存在を知る。建築、製造、メディア＆エンターテインメントなど各業(yè)界をけん引するイノベーターや企業(yè)が世界中から集まり、最先端の技術(shù)や取り組みを披露し、學(xué)び合う。期間中に開催されるカンファレンスは450セッションを超え、2022年は約1萬人が會場へ足を運び、約3萬人がオンラインで視聴した。

照﨑は「セッションの登壇者として參加したい」と手を挙げた。大規(guī)模なグローバルイベントだ。英語での発表には準(zhǔn)備にも時間を要する。しかしながらD’sBIMの取り組みを社內(nèi)で広めるには、日本だけではなく海外も含めた対外的な評価が必要だと考えたのだ。世界中から応募された企畫提案書の中から當(dāng)社の案は第三者機(jī)関の審査を通過し、2022年9月、アメリカ?ニューオーリンズへ。経営者や本社部門の登壇者が多い中、照﨑たちはヘルメットと作業(yè)服姿で講演に挑む。現(xiàn)場の人間が現(xiàn)場で本當(dāng)に必要としているDXを報告するセッションは、參加者に大きなインパクトをもたらし、質(zhì)疑や意見交換が多數(shù)あった。

講演成功の高揚感に包まれ帰國した照﨑たちだったが、殘念ながら、その成果は社內(nèi)でほとんど注目されていなかった。BIMなどのデジタル技術(shù)改革は、主に設(shè)計部門を中心に進(jìn)められており、工事でのデジタル改革はまだまだ知名度が低いので當(dāng)然である。現(xiàn)場で働く社員は多くの業(yè)務(wù)タスクに追われて多忙を極め、新しい情報をキャッチアップする余裕が持てない。照﨑自身も、過去のAUに自社が參加していたことを知らなかった。だからこそ「社內(nèi)の反響が低いのは想定內(nèi)」と語る。

「しかし、今後さらに建設(shè)DXが普及する時代が必ず訪れます。その時、世界的なイベントで自社の取り組みが早くから評価された事実は、きっと私たちの自信につながります」と、これからの活動にも意欲を示す。

※D’sBIM：大和ハウス工業(yè)が手掛ける全物件をBIM化し、業(yè)務(wù)の効率化を進(jìn)めるプロジェクト。

コロナ禍でリモートワークが広がってきた頃、1人の社員が照﨑のもとに配屬された。結(jié)婚を控えていて、パートナーになる人は群馬で勤め暮らしているという。彼女は「本當(dāng)はこのまま東京工事部で働きたい。大きな建物の施工に攜わることは、大學(xué)時代からの夢なんです」と悩んでいた。

一緒に働き始めると、彼女は非常に優(yōu)秀だった。「現(xiàn)場工務(wù)」と呼ばれる事務(wù)所內(nèi)の業(yè)務(wù)、例えばお施主さまや施工店とのやりとり、定例會議などのレジュメ作成、施工図の管理などに秀でた才能があったのだ。

建設(shè)DXの流れに乗せれば、リモートワークで彼女の能力を活かせるのではないか、と照﨑は考えた。全社的にリモートワークが広がってはいるものの工事部での前例はまだない。「群馬に住んでいても『東京工事部』の一員としてできることは十分にある。その體制を共に整えよう」と可能性の追求を約束した。

何度も工事部のトップや人事部との交渉を重ねた結(jié)果、新しい働き方のモデルケースとして正式に群馬からリモートワークで現(xiàn)場工務(wù)を行えるようになった。後日、彼女が産休に入る時、「群馬に引っ越して辭めることになると思っていたのに『ずっと働き続けたい』『産休が明けたらまた戻ってきたい』と思える環(huán)境を作ってくれて本當(dāng)にうれしかったです」と言ってくれた。

さらに東京工事部には、照﨑が長年必要だと言い続けてきた「生産技術(shù)グループ」も発足した。フロントローディング班は、著工前に図面の不整合などをチェックし、設(shè)計擔(dān)當(dāng)者や設(shè)備擔(dān)當(dāng)者へのフィードフォワード業(yè)務(wù)を擔(dān)當(dāng)。施工図班は、著工前から著工後も現(xiàn)場の施工図の作図を擔(dān)當(dāng)する。生産技術(shù)グループも現(xiàn)場工務(wù)と同様にリモートワークでの業(yè)務(wù)が可能なため、さらに可能性は広がった。特定の業(yè)務(wù)を擔(dān)うひとりの負(fù)荷が上がることを當(dāng)たり前とせず、その負(fù)擔(dān)を分散させる。かつ個々の能力を発揮しながら生産性を高めていく。そんな理想をかなえる場所が徐々に実現(xiàn)し始めた。

全國の事業(yè)所にも、さまざまな事情で悩んでいる人がいるだろう。制度や組織を変えるのは簡単なことではないが、確実に変化は始まっている。照﨑も、フレックスタイム制が導(dǎo)入されてから時々子どもを保育園に送れるようになったという。他の父親たちが子どもを送迎する姿を見て、「なぜ自分たちにはできないのだろう」と疑問に思っていたのも過去の話だ。世の中の変化、そしてDXの勢いは止まらない。この新しい働き方も必ず全國へ広がっていく、と確信している。