陸奧灣に面する青森県野辺地町は、かつて南部藩の外港として栄えていました。この時(shí)往來していた北前船によってもたらされたのが、薬草のカワラケツメイを焙じて飲むカワラケツメイ茶。そして町の商家の旦那衆(zhòng)たちは上方の食文化「茶がゆ」にならい、この薬草茶を使った茶がゆをすすっていたと伝えらています。

「東北ではおかゆといえば一般的に、『かさを増やすための貧しい食事』というイメージがありますが、この茶がゆは當(dāng)時(shí)の旦那衆(zhòng)だけが味わった贅沢な食事なんですよ」と説明するのは、駅前で１００年以上も営む「松浦食堂」の三代目?松浦敬祐さん。奧様のリツさんと一緒に12～13年前から、茶がゆに郷土料理７品を付けた「茶粥定食」（１５００円?２人前から要予約）を提供しています。

リツさんによると、昔は町のどの家庭でもカワラケツメイ茶を栽培していたとのこと。それが食生活の変化によっていったん途絶えてしまったのですが、町おこしの一環(huán)で栽培が奨勵(lì)され、松浦さん夫婦もメニュー化と同時(shí)に栽培を始めました。

８月末から９月に収穫した茶葉は、乾燥してたたき、使う分だけを廚房の大きな釜で煎ります。この時(shí)お茶の風(fēng)味や色がしっかり出るよう、30～40分かけてじっくり煎ることがポイントです。

できた茶葉は水から煮出し、茶殻を漉して土鍋へ。さらにそこに地元産の米「津軽ロマン」を入れて炊くこと45分間。とろりとやわらかい茶がゆの完成です。

土鍋のふたを開けるとカワラケツメイ茶特有の香りが鼻孔をくすぐりますが、食べると意外にもクセのないやさしい味わい。薬味のごま塩をかけたり、定食に付く「みそかやき（味噌貝焼き）」をのせると、何杯でも食べられます。

現(xiàn)在はのどかな港町の野辺地町ですが、當(dāng)時(shí)の豪商たちの豊かな暮らしぶりに思いを馳せながら味わうのもまた、一興でしょう。

文／赤坂環(huán)

撮影／奧山淳志

rakra2008年1月號(hào)掲載

2007年12月頃撮影