かつて北東北の人々にとって、漬け物は冬場の貴重なビタミン補(bǔ)給食であり、保存食でした。しかし、「がっこ」という呼び名で知られる秋田県の漬け物には、そんな「質(zhì)素」で「地味」なイメージはありません。むしろ、米がふんだんに使われたり、色よく仕上げられたりしていることから贅沢感があり、米どころ?秋田の食の豊かさが垣間見えます。

　「秋田では、自家製の漬け物を持ち寄ってお茶を飲みながらおしゃべりすることを『がっこ茶』と言い、昔から主婦の楽しみのひとつ。漬け物がおいしいということは、主婦やその家の自慢だった。だから商売をしていた私の父親は、お客さんを接客している料亭などに、家の漬け物を運(yùn)ばせていましたね」と懐かしそうに話すのは、秋田市で郷土料理店「お多福」を営む安倍太郎さん。

　安倍さんのお母さんは、食通のお父さんの影響もあって大の料理好きで、それが高じて35年前に同店を開きました。特に漬け物作りが好きだったお母さんは、自宅の離れに設(shè)置した工房で年間約120種もの漬け物を作っていたほど。燻した大根を漬けた「いぶりがっこ」や、砂利と米と大根を交互に重ねて漬ける「たくあんの砂利漬け」、赤ジソで色づけしたモチ米と一緒にキュウリの古漬けなどを漬け込んだ「あねっこ漬け」といった秋田の定番の味はもちろん、「大根の黒砂糖漬け」などオリジナルもかなりあったそうです。

　カウンター席のほかテーブル席や和室のある店內(nèi)は全體的に趣があり、落ち著いて食事が楽しめます。

文／赤坂環(huán)

寫真／奧山淳志

rakra2007年5月號掲載

2007年4月頃撮影